研究概要 |
磁気秩序と強誘電秩序が1つの相において共存する物質は、多強性物質(マルチフェロイック物質)と称され、電気磁気効果や巨大な磁気容量効果などの物性と示すことから近年盛んに研究が進められてきている。本研究の目的は、酸化物誘電体において、電気磁気多重極子(電気分極、電荷、スピン、軌道)の相関により生じる電気磁気効果等の新規な現象を探索し、その微視的な起源の解明、これに基づいた新物質の探索を行う事である。今年度は、RMnO_3(R=Tb,Ho,Dy,Y,Ho)およびRFe_2O_4(R=Lu,Y,Eu)系での磁気・誘電相関効果について、試料作製、磁気・誘電測定、放射光x回折実験および電子顕微鏡実験を行い、下記のような研究成果を得た。 (1)GdMnO_3、TbMnO_3がb軸方向に磁場を印加した場合にa軸方向に電気分極を持つ強誘電相へと転移することが報告されていたが、その転移と同時にスピン系が波数(0 1/4 1)を持つ整合反強磁性相へと転移していることを明らかにした。 (2)(Td,Dy)MnO_3の無磁場下での磁気構造が、常誘電状態では正弦波的なコリニア反強磁性であるのに対し、強誘電状態では横滑り型らせん磁性となることを、中性子散乱磁気構造解析により直接示した。 (3)(Td,Dy)MnO_3系の無磁場下での強誘電転移が磁気構造の波数の変化を伴わないことを明らかにした。 (4)層状鉄酸化物RFe_2O_4における誘電性と電荷・スピン・軌道構造について理論的な解析を行った。この物質の電子物性を担うFe3d電子において、結晶場の計算を行うことでFe2+イオンには軌道の自由度が存在することを指摘した。
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