研究課題/領域番号 |
16340097
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前川 禎通 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005973)
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研究分担者 |
福山 秀敏 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10004441)
遠山 貴巳 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (70237056)
高橋 三郎 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (60171485)
小椎八重 航 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20273253)
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キーワード | 遷移金属酸化物 / スピンエレクトロニクス / 量子キュービット / モット絶縁体 / 量子伝導 / π接合 / ジョセフソン効果 |
研究概要 |
本研究における量子伝導とは、電子のスピンや軌道の示す量子効果により制御された輸送現象一般を示している。 当基盤研究の目的は「スピン及び軌道による量子伝導の制御理論」を構築し、電子の内部自由度から出発した新しい物質科学の創成と21世紀のエレクトロニクスの新しい指導原理を引き出すことである。当基盤研究の初年度では、強磁性体(FM)と超伝導体(SC)の接合を用いた量子ビットの提案を行った。本年度はこの量子ビットの安定性について詳しく調べた。 超伝導リングにおいて超伝導体/絶縁体/超伝導体接合は、通常のジョセフソン接合(ゼロ接合)であり、ジョセフソン結合エネルギーの位相差依存性は余弦波で表される。一方、超伝導体/強磁性体/超伝導体接合は、位相差がパイの場合に系が安定となるパイ接合である。金属接触的なパイ接合の場合、ジョセフソン結合エネルギーの位相差依存性は、単純な余弦波からずれた関数形で表される。その結果、ゼロ接合と金属接触的なパイ接合との競合によって、自由エネルギーが位相差に対して2つの縮退した最小値を持つ。また、この2つの状態においては、互いに反対回りの循環電流が超伝導リング中を流れる。2つの縮退した状態間のトンネル効果により、結合・反結合状態が形成されるが、本量子ビットではこの2状態をビットとして利用する。この量子ビットは、定常的な外部磁場を必要とする従来のジョセフソン磁束量子ビットに比べ、磁場を印加せずにコヒーレントな2状態が形成されるという利点を持つ。本年度の研究で明らかになったことは、温度によりパイ接合がゼロ接合に変わり得ることである。この研究により本量子ビットの設計指針が示された。
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