研究概要 |
超伝導混合状態における比熱の磁場方向依存性は、異方的超伝導体のギャップノード構造を探る有効な手段である。この測定原理は、磁場によって誘起されるフェルミエネルギーでの状態密度が、磁場とノード方向との角度の関数として振動するという理論的予測に基づいている。本研究課題では、この方法を用いてf電子超伝導体CeRu_2,PrOs_4Sb_<12>,URu_2Si_2の超伝導ギャップのノード構造を調べ、以下の結果を得た。 1.CeRu_2では、磁場を(001)面内で回転させたときに[110]方向を極小とする4回振動が観測された。その振動の相対強度は磁場低下とともに減少し、0.3Kでは0.5T以下で消失した。これは超伝導ギャップが完全に開いていて1K程度の極小ギャップが[110]方向にあるとすると理解でき、この物質の超伝導が異方的s波であることの証拠であると考えられる。 2.PrOs_4Sb_<12>では磁場を(001)面内で回転させたときに[100]方向を極小とする4回振動が観測された。その相対強度は磁場低下とともに現象傾向を示したので、少なくとも比熱に寄与している重い有効質量のバンドに関してはCeRu_2と同様、ギャップが完全に開いている可能性が高い。また超伝導相内で対称性の変化は見られなかった。 3.URu_2Si_2では磁場をc面内で回転された場合、比熱の角度振動は見られなかった。これはノード構造がc軸の回りに回転対称であることを意味する。一方比熱の磁場依存性には磁場方向によって顕著な違いが見られ、c軸方向では磁場に比例して増加する振る舞い、a軸方向には磁場の平方根に比例するような形で増加することがわかった。これらの結果からc軸方向に点状ノードを持つギャップ構造である可能性が高い。また、高磁場下では常磁性効果を示す磁場依存性が観測され、d波超伝導であることが確認された。
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