βパイロクロア型オスミウム酸化物超伝導体AOs_2O_6について、試料合成、構造評価および物性測定を行った。A元素としては現在までに3つのアルカリ金属元素Cs、Rb、Kを含む酸化物が合成されており、それぞれ超伝導転移温度T_cが3.3K、6.3K、9.6Kである。以前に報告したαパイロクロア酸化物Cd_2Re_2O_7のT_c=1.0Kと比べると最大一桁T_cが上昇したことになり、何らかの新しい超伝導機構が働いていることを予感させる。また、電気伝導性を担う5d電子を供給するオスミウムイオンはいわゆるパイロクロア格子をなし、これが3次元フラストレート格子であることから、何らかの新しい物理の可能性を期待させる。 本年度の研究において、KOs_2O_6の良質な単結晶の作製に成功した。これを用いて、電気抵抗、磁化、比熱等を測定した結果、強結合超伝導性が明らかとなった。また、異常に大きな電子比熱係数や特異な電気抵抗の温度依存性が見出された。一方、詳細な構造解析の結果、β型パイロクロア構造ではA原子がOsO_6八面体の作る大きなケージの中に存在するため、ケージ内で自由に動くことが可能となり、激しくラットリングしていることが分かってきた。この非調和振動は低温でも生き残り、特にKOs_2O_6ではラットリングの相転移と思われる1次転移が見出された。この相転移は明らかに超伝導性に影響を与えており、両者の相関が興味深い。
|