研究概要 |
斥力起源の超伝導機構と局所的量子臨界現象について以下のような成果が得られた。 1)有機化合物(TMTSF)_2PF_6や銅酸化物Sr_2Ca_<12>Cu_<24>O_<41>などの準1次元系が圧力下で示す超伝導は「普通でない振る舞い」を示す。これらの超伝導状態を解明するために準1次元超伝導体の引力相互作用を摂動的くりこみ群の方法で研究しそれぞれの実験事実を理解することに成功した。 2)UやPrを含む重い電子化合物では強い電子相関をもつf電子はf^2-配置をとる場合があると考えられている。これらf^2配置のフェルミ液体での準粒子間相互作用は、実験的諸事実から、Ce系のようにf^1-配置のフェルミ液体の場合とはたいへん異なっていることが分かってきた。本研究ではf^2-配置の不純物モデルを「数値くりこみ群」の手法で研究し、強相関の現れる普通のパラメタ領域において、軌道内の有効クーロン相互作用よりも軌道間のそれがかなり大きくなる場合が存在することを見出した。これはUPt_3などの超伝導機構を考える上で重要な示唆を与える。 3)反強磁性量子臨界点近傍にある金属中での近藤効果を「2ループの摂動論的くりこみ群」により研究し、フェルミ面が反強磁性に関するhot-spotを持つ場合には、多チャンネル近藤効果の固定点が安定に存在することを示した。これは、いくつかの重い電子系の反強磁性量子臨界点において観測されている「局所的量子臨界現象」の微視的理論の基礎を与えるものと言える(cond-mat/0501337に発表、Deconstruction of the Kondo Effect near the AFM-Quantum Critical Point、H.Maebashi, K..Miyake and C.M.Varma)。 4)一連の強相関電子系において熱起電力係数(ゼーベック係数)Sと比熱のゾンマフェルト係数C/Tの比が低温極限でほぼ1のオーダーの普遍比をとることが実験的に見出されていたが、これを理論的に説明することに成功した。
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