研究概要 |
1)1.6Kにおいて,15Tまたは18T超伝導磁石,ベクターネットワークアナライザーおよび独自に開発した回転型共振器を用いて,東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センターで有機導体β"-(BEDT-TTF)(TCNQ)_<1-x>(F1-TCNQ)_x(x=0,0.05)の磁気光学測定を行った。いずれの系についてもPORが観測され,非常に詳細な角度依存性測定をおこなうとともに,その解析をおこなった。その結果,x=0塩については非常に異方的だが擬二次元的なαとβ軌道からなるフェルミ面を持つことが明らかとなった。この結果,これまで擬一次元的なフェルミ面の存在を指摘していたADMRO測定結果については,非常に異方的な擬二次元フェルミ面からくるYamaji振動として解釈できるという結論に達した。また,x=0.05塩に関しては,測定結果から擬一次元フェルミ面を持つことがはじめて明らかとなった。これは,ドーピングによるdisorderが一次元系に特有なフェルミ面のネスティングによる転移を抑制していることを示していると考えられる。 2)磁場誘起超伝導体λ-(BETS)_2FeCl_4の磁気光学測定を,1.4Kにおいて,米国フロリダの強磁場研究所の33T水冷磁石を用いておこなった。光源としては後進後波管(BWO)を,検出器としてはInSbホットエレクトロン検出器を用い,試料回転が可能な透過型試料ホルダーを作成して測定をおこなった。針状の試料1本で測定をこころみたが,マスクがなかったこともあり信号を検出することができなかった。そこで,マスクをつけ教本の針状試料を平行に並べ,試料間を光が透過するよう配置した。試料回転機構を用いてできるだけ磁場がc軸に平行となるよう試みたが,ESR信号が完全に消失するような配置は実現できなかったので,一部の試料は磁場が完全にc軸と平行にはなっていなかった可能性が考えられる。その結果,高周波数領域において8T付近の透過度が増大するような非常に特異な周波数依存性が観測された。この特異な振舞の起源は,まだ明らかになっていない。ただ,強磁場領域では,高周波数のBWOの安定度に影響があるようでベースラインに乱れが生じており,PORのような磁気光学吸収の観測にはいたっていない。
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