研究課題/領域番号 |
16340107
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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研究分担者 |
松田 康弘 岡山大学, 理学部, 助教授 (10292757)
大島 勇吾 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (10375107)
崔 光用 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20375108)
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キーワード | 単分子磁石 / 強磁場 / 量子計算 / 量子スピン系 / 磁性 |
研究概要 |
本研究では、単分子磁石のうちで新しいクラスの物質として注目されている多面体構造を有する物質群(スピン多面体)の物性の解明を目指している。本年度は、3角及び5角形からなる20面体であるMo72Fe30に関して研究を行った。パルス磁場を用いて飽和に至る磁化過程を精密に測定し、低温における磁化過程において強いフラストレーションに起因する1/3磁化プラトーを見出した。このプラトーの幅に関して希釈冷凍機温度に至る測定を行い、幅が温度によらないことから、この物質において交替磁場が重要な役割を果たしている事を示した。さらに、ESRや比熱の測定から、約3K付近において、低温における準安定状態への移行に伴う磁気異常を見出し、擬似反強磁性相転移現象として説明した。スピン多面体は、分子内で巨大な自由度を有するが、有限系のために通常の熱力学的相転移は起こらない。今回の結果は、単分子磁石における内部自由度およびそのスピン相関に関して初めてその性質を明らかにした研究として重要である。 スピン多面体研究の進展のためには多様な物質群を見出すことが必要である。本年度はMo72Fe30の鉄イオンをスピン1/2のVイオンで置換したMo72V30およびMo72V20に関しても交換相互作用等の評価を行い、これらがスピン多面体としての特性を有することを確認した。さらに、3角プリズム構造を有するMn6多面体においても低温で1/3磁化プラトーを見出し、磁化プラトーがフラストレーションを有する多面体の共通の性質であることを明らかにした。
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