研究課題/領域番号 |
16340108
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
新井 敏一 京都大学, 低温物質科学研究センター, 助手 (80333318)
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研究分担者 |
矢山 英樹 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (60166840)
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キーワード | 2次元電子 / 原子状水素 / 超流動 / 2次元超流動 / エッジマグネトプラズモン / 液体ヘリウム / 表面 / 電子付着 |
研究概要 |
ヘリウム液面上に浮かべた2次元水素原子気体の状態を調べるため、2次元電子を同じヘリウム液面上に共存させてセンサーとして用いた。液面垂直方向に強磁場をかけ、振動電場で2次元電子密度に揺らぎを生じさせると、エッジマグネトプラズモン(EMP)とよばれる2次元電子に特徴的な振動モードを励起することができる。EMP信号の減衰率は電子の移動度によって決まり、電子の移動産は電子の散乱課程に強く影響される。このことから、本研究では電子と水素原子の散乱がEMP信号の減衰率を大きくすると予想し、電子一水素原子2次元共存系でEMP信号測定を行った。前年度までに以下のことを明らかにしてきた。(1)水素原子と電子を共存させると、水素原子による電子付着反応と水素原子同士の再結合反応のため、それぞれの密度が時間とともに減少する。(2)強い磁場をかけてスピン偏極させることにより、電子付着と再結合の反応速度が両方とも抑制される。(3)密度が時間とともに減少する環境において、新たに開発したパルスEMP法による短時間の測定を連続して行うことが有効である。 これらをふまえて、温度1K以下の液体ヘリウム表面に電子と水素原子を共存させた2次元系をつくり、液面垂直方向に5Tの磁場をかけて反応速度を抑制した。パルスEMP法で信号の減衰率を測定したところ、共存水素原子の存在に影響されないことがわかった。このことは、電子と水素原子の散乱断面積がきわめて小さいことを意味している。測定結果と我々の実験精度から散乱断面積の上限値は0.01nm以下(2次元の散乱断面積だから長さの次元をもつ)と見積もられた。散乱断面積がなぜこんなに小さいのか、理論的考察を進めている。
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