研究概要 |
本研究課題では新規4d,5d遷移金属酸化物を発見すること、低スピン配置による物性を解明することを主たる目的とした。また、低スピン配置の物理を理解するため4d,5d遷移金属酸化物以外の周辺物質に関しても研究を進めることを付加的な目的とした。 高圧合成により新物質NaRh_2O_4,CaRhO_3を発見した。NaRh_2O_4は電子相間の比較的強いn型の金属であり、NaをCaで置換すると半導体へと連続的に変化することが分かった。また、Caとの固溶体は2K以上で磁気秩序を示さないことを明らかにした。一方、CaRhO_3はCaをSr置換しても物性に大きな変化を生じないことを明らかにした。(Sr, Ca)RuO_3と対照的な振舞いである。 高圧合成の特徴を生かし、Sr_2CoO_4,高圧相LiMn204などを発見した。Sr_2CoO_4は2次元強磁性体としては最高のキュリー点255Kをもつ。Srサイトの置換効果を中心に研究を発展させ、Coイオンが中間スピン状態にあることが分かった。一方、LiMn_2O_4はNaRh_2O_4と同じ構造をもち、10K付近でスピンーグラス転移を起こすことを明らかにした。また、高圧合成により超伝導体η-MO_3C_2、γ-Mo_2N、NbNを合成し、各種超伝導パラメータを決定するなどした。 低スピン系Na_x(H_3O)_zCoO_2・yH_2Oの超伝導機構解明を試みた。Coの価数とNaの量を独立に変化させ超伝導相図を作成した。Coの価数のみならずNa量に超伝導が敏感に変化することから超伝導を引き起こすバンド構造が推察された。核四重極共鳴測定などにより本超伝導相に隣接して磁気秩序相があることが明らかになった。また量子臨界点近傍の磁気揺らぎによる超伝導である可能性が示唆された。
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