多重散乱媒質中を伝播した光にはさまざまな相関が存在する。本研究の目的は、多重散乱媒質を伝播する光を対象とし、(1)多重散乱媒質中での光の揺らぎの相関を解明し、その応用として(2)多重散乱媒質での永続的ホールバーニングについて実験を展開する、ことである。 平成17年度は、具体的に、多重散乱媒質中の揺らぎの「内部」相関を利用し多重散乱媒質が散乱とあわせて光反応性を有している系でのホールバーニングの実験を展開した。このホールバーニングは、空間的なスペックルを光反応によって書き込むことによって形成されるものである。平成17年度は、(1)媒質の厚さなど幾何学的条件、(2)媒質の平均自由行程、(3)吸収、(4)サンプルの境界条件、などを系統的に変化させホール形状への影響を調べた。この結果、(1)媒質の厚さが拡散吸収長よりも薄くなるにしたがって、ホールの幅が広くなると同時に、形状が丸みをおびてくること、(2)媒質の平均自由行程が短くなるとホールの裾が急速に広がること、(3)吸収が強くなるにしたがってホールの幅が広くなること、などを実験で捕らえることに成功した。 平成18年度は、これらの実験結果の理論解析を進め、また、これまでの研究成果を基盤にして、世界で最も狭い室温周波数ホールバーニングの実現を進める。これらの効果は周波数多重光メモリー等への応用の可能性を持っている。
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