多重散乱媒質中を伝播した光にはさまざまな相関が存在する。多重散乱媒質を伝播する光を対象とし、[1]多重散乱媒質中での光の揺らぎの相関を解明し、その応用として[2]多重散乱媒質での永続的ホールバーニングについて実験を展開した。 (1)第二高調波発生法による揺らぎの相関実験 多重散乱媒質の「内部」の揺らぎの相関を実験的に調べる方法として、新しく2光束相関法による第二高調波発生法による揺らぎの相関測定をおこなった。 (2)多重散乱媒質でのホールバーニング 多重散乱媒質が散乱とあわせて光反応性を有している系でのホールバーニングの実験を展開した。このホールバーニングは、空間的なスペックルを光反応によって書き込むことによって形成されるものである。[1]媒質の厚さなど幾何学的条件、[2]媒質の平均自由行程、[3]吸収、[4]サンプルの境界条件、などを系統的に変化させホール形状への影響を調べた。この結果、[1]媒質の厚さが拡散吸収長よりも薄くなるにしたがって、ホールの幅が広くなると同時に、形状が丸みをおびてくること、[2]媒質の平均自由行程が短くなるとホールの裾が急速に広がること、[3]吸収が強くなるにしたがってホールの幅が広くなること、などを実験で捕らえることに成功した。 これらの成果をもとに、平均自由行程が小さく、吸収の少ない理想的なサンプルを用意し、世界で最も狭い室温周波数ホールバーニングの実現を進めた。現在までに、500MHz程度の超狭帯域ホールの観測に成功している。多重散乱媒質を伝播した光は、極めて長い経路を伝播しており、このことが入射周波数に対してホールが高い周波数選択性を持っていることのメカニズムになっている。この効果は周波数多重光メモリー等への応用の可能性を持っている。
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