研究課題/領域番号 |
16340118
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
占部 伸二 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (20304040)
|
研究分担者 |
田中 歌子 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 講師 (20359087)
豊田 健二 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助手 (20314403)
|
キーワード | レーザー冷却 / イオントラップ / カルシウムイオン |
研究概要 |
単一Caイオンのレーザー冷却においては小型のrfトラップ中に捕獲された1個のイオンのマイクロ運動の補正の最適化、冷却レーザーシステムの周波数ドリフトの改善などを行うことにより、ドップラー限界に近い640μK(振動量子数約n=4)までの冷却、さらにサイドバンド冷却をおこなうことにより振動量子数約n=0.2まで単一イオンを冷却した。また、ドップラー限界近くまで冷却されたイオンを用いて基底準位と準安定準位間のコヒーレント制御の実験を行った。すなわち、729nmの電気四重極遷移を励起する光パルスを照射して基底準位と準安定準位間のキャリア遷移に対するラビ振動を観測した。ラビ振動の減衰に寄与する要因を解析することにより現在のところレーザー強度の変動がデコヒーレンスに太きく寄与していることが分かった。 複数個の冷却されたイオン配列の発生のために3つおよび5つのセグメントに分割されたリニアトラップを用いて、2個のイオンのドップラー冷却を行った。3つの異なる方向から冷却レーザー光を照射して励起スペクトルの観測、および光子・rf相関法を行うことにより、3次元的なマイクロ運動の評価を行い、3方向の余剰マイクロ運動をほぼ完全に補正した。冷却された2個のイオンに電気四重極遷移を励起する729nm光を照射してこの遷移のスペクトルに現れる運動サイドバンドの測定を行い、イオンの冷却状態の評価を行った。この結果、イオンはLamb-Dicke領域まで冷却されていることが確認された。重心運動による振動サイドバンドに加えストレッチモード、およびロッキングモードによる振動サイドバンドが同定された。重心運動のサイドバンドの高さからイオンは振動量子数として約n=16以下まで冷却されていることを確認した。さらにσ偏光のレーザー光を用いて基底状態のゼーマンサブレベルの一つに光ポンピングを行い、基底状態(S_<r/2>)→準安定状態(D_<5/2>)→励起状態(P_<3/2>)→基底状態という閉じたサイクルを構成し、準安定状態から励起状態への脱励起レーザー光を導入することにより閉じたサイクルを構成し、729nmにおける電気四重極遷移を用いたサイドバンド冷却を行った。電気四重極遷移の運動サイドバンドのレッドサイドバンドとブルーサイドバンドの高さの比を計測することにより2個のイオンに対して振動基底状態に近い振動量子数約n=0.7まで冷却されていることが確認された。
|