研究概要 |
平成17年度は,伊豆大島火山の山頂火口近傍に構築した重力・電磁気連続観測システムによる観測を継続するとともに,得られたデータを解析し,山頂火道内のマグマの移動を捉える上でノイズ要因となる変動の補正方法を開発することを計画し,以下のことを実施した. 1.重力観測システムの高度化 (1)山頂火口近傍の観測点において施設の改修工事が行われたため自動重力計の設置が遅れたが,無線LAN経由で測定データを取得することの目処がついた. (2)山頂観測点における重力連続観測の基準点とするため,地震研究所の研究協力者により,山麓の伊豆大島火山観測所およびカルデラ縁にある既設中継観測点2カ所で絶対重力連続観測がそれぞれ1週間実施され,地震研究所からLAN経由で観測データの取得および稼働状況のモニターが可能であることが確認できた. 2.電磁気連続観測システムの改良とデータ解析 (1)山頂火口周辺5カ所に設置したACTIVE(制御電流を用いた群列時間領域電磁探査法)受信機による観測データを無線LAN経由で取得することは,トラブルもなく順調に継続できた. (2)観測された時系列データのSNを改善するため,処理方法の高度化を行った. (3)山頂火口下の電気伝導度変化を推定する計算手法を開発し,シミュレーションにより,3次元的な変化を推定できることを確かめた. 3.山頂火口近傍での地中炭酸ガス濃度の連続観測 大島全域の地殻変動および地震活動の観測結果から,地下深部からのマグマの供給/蓄積による山体膨張が一様ではなく,変動していることが分かった.特に,膨張加速後にやや収縮する現象は,噴火準備過程(マグマ中に揮発成分が濃集して浮力を獲得し,再上昇する条件がどのようにして達成されるかということ)と密接に関係する。そこで,マグマから最初に脱ガスするCO2をモニターするため,山頂火口近傍で地中温度およびCO2濃度の連続観測を開始した.
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