研究概要 |
伊豆大島火山のマグマ上昇機構の物理モデルを構築するために,山頂火口近傍に無線/有線を用いた重力・電磁気LAN観測システムを構築し,以下の成果を得た. 1.山頂火口近傍における重力連続観測の基準として,山麓およびカルデラ縁に3カ所の絶対重力観測網を構築し,これらを基準とする山頂火口近傍の重力変化観測が2005年5月,2006年9月,2007年5月に実施された.現在のところ,火山活動に伴う有意な重力変化は捉えられず,山頂火道内浅部へのマグマ移動は生じていない.重力変化に及ぼす降水の影響を補正するため,カルデラ域における重力季節変化と降水量との対応関係を調査し,重力季節変化が1次元水理拡散モデルで良く説明できることが分かった. 2.山頂火口周辺に設置したACTIVE(制御霞流を用いた群列時間領域電磁探査法)受信機をLAN観測網に接続し自動連続観測を開始した.シミュレーションにより,ACTIVE観測データを用いて山頂火口地下の3次元的な比抵抗変化を推定できることを確かめた.さらに,山頂火口周辺の地下比抵抗構造変化を捉えるため,3次元インバージョン手法を開発した. 3.伊豆大島全域の地殻変動および地震活動の観測結果から,地下深部からのマグマの上昇/蓄積による山体膨張が変動していることが分かった.さらに,マグマから脱ガスするCO_2をモニターするため,山頂火口東部で地中CO_2濃度の連続観測を平成17年度に開始した.その結果,山体膨張の加速,大島周辺のやや深い地震の増加およびCO_2濃度増加との問に対応関係が認められ,これらが大島火山の地下深部からのマグマ供給率の増大によって引き起こされていることが分かった. 今後も,地殻変動,地震活動,三原山頂地下の帯磁変化と比抵抗変化および地中CO_2濃度変化の総合観測を継続し,伊豆大島火山のマグマ上昇/蓄積/脱ガス過程を捉え,マグマ上昇機構のモデル構築をめざす.
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