(1)固体水素の高温・高圧下の圧縮特性 放射光を利用した固体水素の粉末X線回折実験を行った。圧力発生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて、DAC全体を高温に保ち、400Kで40GPaまでの回折実験を行った。得られた固体水素の400Kのモル体積は300Kの同じ圧力でのモル体積と実験誤差の範囲で同じであった。今後、さらに高温及び熱膨張率が大きいと考えられる比較的低圧域でのX線回折実験を進め、固体水素の高圧・高温下の圧縮率、熱膨張を調べる予定である。 (2)遷移金属水素化物 タングステンへの水素の溶解熱は非常に大きいため、タングステンの水素化物は知られていなかった。このため、タングステンは高圧下の水素の封止材として利用されている。1ミクロン径のタングステン粉末と水素を封入し、高圧下のX線回折実験を行った。25GPa以上の圧力でタングステンは体心立方格子から、六方格子へと変化し、セル体積は約3.3Å^3増加した。これは水素を吸蔵したことを示している。水素原子がタングステン六方格子のどの位置を占めているかは、X線回折実験からは判らないが、同族のモリブデンが高温・高圧下で水素化物を形成し、anti-NiAs構造になることから、タングステンも水素を吸蔵し、anti-NiAs構造になったものと考えられる。また、その体積膨張から、水素化物のストイキオメトリーはWH_x (x=1)と予想された。一方、レニウム金属(hcp)は超高圧下でレニウム原子の組む六方最密面の一層置きに水素を取り込み、anti-CdI_2構造となることを明らかにした。また、レニウム水素化物は純金属と同じ圧縮率を持っているが、タングステンでは水素化により硬くなることが判った。
|