研究概要 |
(1)固体水素 150K,30Kで100GPaを越える圧力までのX線回折実験を行った。固体II相でもI相と同様,六方最密構造で指数付けすることができる三本の回折線(100,002,101)が得られた。I-II相境界を横切っていずれの回折線のd-値も連続であり、c/a比にも異常は見られず、単調に減少した。一方、20GPaを越える高圧下の体積の温度依存性は非常に小さく、圧力の決定誤差の範囲であった。 (2)金属水素化物 地球核の主要な成分と考えられているFe-10.5%Niの高圧下の圧縮特性をX線回折実験から調べた。圧力媒体にヘリウムを用い、53GPaまで加圧した。14.8GPaで磁性をもつ体心立方構造から非磁性の六方最密構造へと転移した。純鉄での13.3GPaと比べて高い値となった。また、hcp相のc/a比は圧力に依存せず、1.611で一定であった。hcp相の体積-圧力測定から得られた状態方程式から見積もられる地球核圧力での密度は従来推定されている値より10%程度大きい値となった。一方、高圧下の水素吸蔵過程の研究は、Fe-10.5%Niとモル比で5倍程度の水素を高圧セルに封じて行った。純鉄の場合と同様、4GPa程度で水素を吸蔵し、dhcp構造へ転移した。水素吸蔵による体積増加は金属原子一個当たり、約2Å^3であった。 (3)超高圧発生 超高圧発生用のダイヤモンドアンビルセル(DAC)では通常、ダイヤモンドの[001]方向を加圧軸としているが、DACの発生圧の向上と限界を明らかにするため[111]方向を加圧軸とするアンビルで超高圧発生を行い、その応力状態をラマン散乱実験から明らかにした。応力状態の解析からは300GPaを越える高い圧力の発生が可能であるとの結論を得た。
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