(1)固体水素:温度・圧力範囲、30K-395K・6GPa-100GPaで固体水素のX線回折実験を行った。全領域でhcp格子で指数付けできる回折線を得た。その結果、395K、300K、150Kと30Kの温度でモル体積の圧力依存性を求めた。20GPa以上では、30K-395Kの温度範囲で、体積変化は非常に小さく、圧力の決定誤差の範囲内であることが明らかとなった。一方、固体I-II相境界と考えられる30K-80GPaの前後でも格子定数及びhcp格子のc/a比とも連続であり、特に異常は認められなかった。 (2)金属水素化物:タングステン、レニウムの高圧下の水素吸蔵過程を調べた。レニウムは7GPa程度で水素を吸蔵し、anti-CdI_2構造に転移した。一方、タングステンは25GPaで水素を吸蔵し、hcp構造へ転移した。レニウムは転移に際して、母体の金属格子はhcp格子のまま変化は無く、その八面体空隙に水素原子が秩序化した状態で取り込まれている。タングステンでは転移に際し、母体の金属格子はbccからhcpへと変化し、取り込まれた水素原子の秩序配列は観測されなかった。地球核の主要な構成元素と考えられているFe-10%Niの水素吸蔵状態と圧縮特性も明らかにした。Fe-10%Ni合金は6GPaで水素を取り込み、bccからdhcp構造へと変態した。しかし、回折線巾から多量の積層欠陥を含んでいるものと考えられた。母体合金は15GPaでbccからhcpへと転移した。これらの結果は純鉄及び純鉄-水素系の相転移と同様であるが、合金ではいずれの転移も高圧力側へとシフトした。また、純鉄-水素系とFe-10%Ni-水素系の密度は超高圧下では、ほぼ同じになることが明らかとなった。 (3)超高圧発生と圧力スケール:360GPaを超える圧力発生を可能にした。また、ダイヤモンドアンビルのラマンシフト量と圧力の関係を重金属元素の状態方程式で校正し、アンビル自身を圧力マノメーターとする圧力スケールの構築を行った。
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