研究課題
基盤研究(B)
約300万年前以来氷床の発生(氷期)と消滅(間氷期)が交代する気候変動は、数多くの研究から地球の軌道要素が究極的要因になっているもののその応答には気候システム内部の非線形性が強く働いたと示唆されている。氷期間氷期の異なる気候状態やその時間変化が生じるには、氷床、大気、海洋、炭素循環など、さまざまな地球環境プロセスが相互に働いたことが考えられるので、さまざまなプロセスを取り込んだモデルを構築して、数値実験することが要因の解明に役立つと考えられるが計算資源の制約等で系統的な再現実験、感度実験の例は少なかった。ここでは異なる階層の3つの気候システムモデルを構築し、軌道要素に対して気候システムモデルがどのように応答するか、どのような条件が整うと現実の氷期間氷期サイクルのような気候の大きな変化がおこるのか、氷期発生や消滅にどのような偶然性や必然性があるのかなどを、数値実験によってある程度整理する。今年度は階層(1):氷床と気候の長時間変化を扱うモデルを用い氷期サイクルが10万年周期で交代することや最終氷期などには最大海面水準にして約140メートル低下するなどの振幅など再現するのに成功した。その周期性や振幅の現れるメカニズムを感度実験を通じて調べることができた。階層(2):大気大循環と氷床の相互作用に重点をおいたモデルでは、この2つの作用を非同期周期で結合する方法を開発した。階層(3):海洋-大気大循環と炭素循環プロセスに重点をおいたモデルでは、大気海洋結合大循環モデルによる時間断面再現実験を実行した。軌道要素、温室効果ガス濃度、氷床地形を外力として与えて、約二万年前の最終氷期、間氷期、現在を比較する。国際モデル比較実験(PMIP)に提出し比較検討することができた。