星間塵表面における極低温原子反応と重水素濃集機構

2005 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16340145
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (50271531)
• 研究分担者: 香内 晃 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60161866)
• キーワード: 極低温原子反応 / 星間塵表面 / 重水素濃集機構

研究概要

星間塵表面における化学反応は,H_2,H_2Oや星間有機分子等の生成・進化に不可欠である.本研究の目的は,分子雲の極低温領域で特に重要な星間塵原子表面反応を定量的に実験で調べ,さらに原子表面反応による星間分子の重水素濃集過程を解明することである.本年度は以下のことを明らかにした.
(1)固体COにD原子が遂次付加する反応.D原子の付加速度はH原子の1/10以下となり,付加反応によっては重水素濃集が起こり得ないことが分かった.
(2)固体CH_3OH-d_n(n個のD原子を含むメタノール)とD原子が反応し,HとDが置換される反応.CH_3OH-d_nにD原子を照射した時の赤外線吸収スペクトルの変化を調べたところ,CH_3OH-d_nの減少にともない,より重水素化が進んだCH_3OH-d_<n+1>が生成することが分かった.一方,CH_3OH-d_nにH原子を照射しても全く変化は見られなかった.これは一度重水素化したCH_3OH-d_nは安定で,もとに戻らないことを意味し,昨年度のCH_3OH+D実験の結果を裏付けた.大雑把な見積もりを行い,CH_3OH-d_nのnが小さいほど反応が速く進むことが定性的に分かった.

研究成果

• [雑誌論文] 星間塵表面反応によるメタノールの重水素濃集機構 (2006)
  • 著者名/発表者名: 長岡明宏
  • 雑誌名: 日本惑星科学会誌 (印刷中) ページ: 2006
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Dependence of the effective rate constants for the hydrogenation of CO on the temperature and composition of the surface (2006)
  • 著者名/発表者名: Watanabe, N. et al.
  • 雑誌名: Planetary Space Science (印刷中) ページ: 2006
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] 小惑星および隕石の起源と進化における有機質星間塵の役割 (2005)
  • 著者名/発表者名: 香内 晃
  • 雑誌名: 岩石鉱物科学 34 ページ: 114-126
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Novel Routes for Diamond Formation in Interstellar Ices and Meteoritic Parent Bodies (2005)
  • 著者名/発表者名: Kouchi, A. et al.
  • 雑誌名: Astrophysical Journal Letters 626 ページ: L129-L132
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Observation of resonance structures in 4d photoionization of Eu^+ (2005)
  • 著者名/発表者名: Kojima, T.M. et al.
  • 雑誌名: Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomina 71-74 ページ: 144
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] 星間塵表面反応による星間分子の重水素濃集メカニズム (2005)
  • 著者名/発表者名: 渡部直樹他
  • 雑誌名: 日本惑星科学会誌 141 ページ: 175-182
• [雑誌論文] H-D substitution in interstellar solid methanol : a key route for D enrichment (2005)
  • 著者名/発表者名: Nagaoka A. et al.
  • 雑誌名: Astrophysical Journal Letters 624 ページ: L29-L32