沈み込みスラブの脱水によってもたらされたH20流体、スラブや下部地殻の流動・破壊レオロジーに与える影響を調べるため、固体圧式3軸変形試験機を整備し、石英岩をもちいた予備実験を開始した。本試験機は、モホ面付近に相当する1000℃、1万気圧(1GPa)の高温高圧条件において超低速変形実験を可能とする。本年度は軸変位駆動系と温度・圧力計測系を一新した。封圧および軸圧は上下それぞれ1対のロードセルで測定している。封圧はフッ化アンモニウムの転移点によって校正した。今回、パイロフィライトを圧媒体として用い、直径10φのメノウ試料を使用してステップ試験を行ない、試料アセンブリ内部の摩擦を評価した。封圧とみかけの軸圧の計測値の変化は、圧媒体と試料・内側ピストンの摩擦によるものと解釈できる。これを補正するによって、変形中の差応力を精密に決定することが可能となった。予備実験に用いたサンプルの結晶方位は、後方電子散乱像(EBSD)によって解析している。 岩石-流体系および岩石-メルト系の物性を規定する要因として、流体やメルトの分布形態を支配する固液2面角の温度・圧力・組成依存性を熱力学的に解析した。モデリングは格子液体の統計熱力学的モデルと、Cahn-Hilliared理論に基づく連続体モデルを用いた。両理論計算モデルの結果は2元金属系の実験データと調和的であり、また地殻下部における石英-水系の濡れ挙動を定性的に説明することができる。
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