研究概要 |
領家変成帯の上昇削剥(denudation)史を明らかにするために、地質調査で珪線石帯や珪線石カリ長石帯の変成岩に産出する幅数cm〜数十cmの花崗岩質細脈を変形脈と非変形脈に区別し,CHIME年代測定法でそのモナザイト年代(脈形成年代)を測定した。主な成果は以下の通りである。 (1)長野県駒ヶ根地域、愛知県富山・設楽地域、三重県青山地域、山口県柳井地域の花崗岩質細脈の地質調査を実施し、それぞれの地域において,褶曲やブーディン構造を呈する変形脈とシャープな境界を呈する非変形脈が産出することを明らかにした。同じ露頭に変形脈と非変形脈の両方が存在する場合には、後者が前者を切っており,変形脈は変成岩が塑性変形条件下にあるときに貫入したものであり、非変形脈は脆性変形条件下まで上昇した後に貫入したものであることを確認した。 (2)蛍光X線分析装置を使って,ガラスビード方式(主成分,試料:Li_2B_4O_7=0.7g:6.0g;微量成分,試料:Li_2B_4O_7=2g:3g)で,花崗岩質脈の主成分(Si,Ti,Al,Fe,Mn,Mg,Ca,Na,K,P)と微量成分(V,Cr,Co,Ni,Cu,Zn,As,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Ba,Pb,Th)が分析できるようにした。 (3)CHIME年代測定専用電子線マイクロアナライザをオーバーホールして,約6千万年まえまでのモナザイトの高精度年代測定ができるようにした。 (4)平成16年度に測定した変形脈のモナザイトのCHIME年代は,長野県駒ケ根地域と愛知県富山地域が92-90Ma、三重県青山地域が91Ma,山口県柳井地域が95-89Maであった。非変形脈は85Ma〜77Maの年代幅を示すが,各地域の最古の非変形脈のCHIMEモナザイト年代は84±2Maで一致することが判明した。 領家変成帯は,長野県駒ヶ根地域から山口県柳井地域までの広範囲にわたって,90-85Maの短期間で塑性変形の深部から脆性変形の浅部まで,一様に上昇削剥(denudation)した可能性が高くなった。
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