研究概要 |
領家変成帯の上昇削剥史(denudation history)解明においては、塑性変形から脆性変形に移行した時期を決定することが重要となる。珪線石帯や珪線石カリ長石帯の変成岩に産出する幅数cm〜数十cmの花崗岩質脈を塑性変形脈と非変形脈に区別し,CHIME年代測定法でその年代を測定した。主な成果は以下の通りである。 (1)平成16年度に採集した花崗岩脈の年代測定を継続し、塑性変形脈の年代は,長野県駒ケ根地域と愛知県富山地域が95-90Ma、三重県青山地域が91Ma,山口県柳井地域が95-89Maであることを明らかにした。非変形脈は85Ma〜77Maの年代幅を示すが,各地域の最古の非変形脈のCHIMEモナザイト年代は84±2Maで一致することを確認した。 (2)花崗岩脈中の石英は高温で生じたチェス盤タイプの亜粒界を示し、その密度は末期貫入花崗岩(77Ma)の石英に等しい。これから,領家変成帯は花崗岩脈が塑性変形できないような浅所に上昇してから静的に再昇温した可能性が示唆された。 (3)駒ヶ根地域と青山地域の地質を再調査して、85Maの非変形脈から珪線石-カリ長石-石英やスピネル-珪線石を見いだし、85Ma以降に上部角閃岩相を超えたことを実証した。 (4)花崗岩脈が上部角閃岩相を超える変成作用を受けている地域の母岩は、珪線石-カリ長石-石英-菫青石-黒雲母共生を呈するミグマタイトであり、約100Maの自形モナザイトに約80Maの自形モナザイトが2次成長している。 (5)領家変成帯は,長野県駒ヶ根地域から山口県柳井地域までの広範囲にわたって、90-85Maの短期間で塑性変形の深部から脆性変形の浅部まで一様に上昇削剥したこと、上昇後に静的に泥質岩原片麻岩が部分溶融するような高温変成作用(再昇温)を被ったことが明らかになった。
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