研究概要 |
本研究は,大阪堆積盆地の上部更新統・完新統を研究対象として,堆積物中に含まれる炭化粒子を用いて,過去から現在までのバイオマス燃焼の歴史や化石燃料燃焼史,さらにそれに伴う周辺環境への影響を解読することを目的とする.平成16年度の研究実績は以下の通りである. 1.河内平野で細粒堆積物が連続的に厚く堆積している東大阪市北宮小学校において,約26mの上部更新統〜完新統の連続堆積物試料を採取した.このコアの岩相記載と含まれる貝殻・木片のC-14年代測定結果から,下位より順に,淡水成の砂礫層主体の上部更新統,それを不整合に覆う完新統の海成粘土層,さらに上位に汽水成のシルト層,淡水成の砂・シルト互層が発達することを明らかにした.さらに,同コアの全炭素・全窒素・全硫黄濃度,珪藻などの微化石の予察的分析を行い,堆積環境の変化は岩相変化と類似することを明らかにした. 2.北宮小学校ボーリングコア及び周辺の遺跡現場の堆積物試料の炭・微粒炭分析(炭の同定と含有量測定)を行い,主に縄文時代以降の植物燃焼の歴史を解析した.その結果,縄文時代後期以降,奈良時代にかけて数回の微粒炭濃集層準があることを明らかにした. 3.大阪湾や大阪平野の溜池堆積物を用いて球状炭化粒子・微粒炭分析を実施し,過去約100年間の球状炭化粒子・微粒炭含有量変化を解析した.1930年頃から連続的に産出する球状炭化粒子の含有量は1960年頃に最大となり,大阪周辺での化石燃料燃焼量変化と非常に良く調和すること,さらに球状炭化粒子の形状は石炭と石油で異なることを明らかにした.また,微粒炭分析では,1900年頃〜1950年代の間,比較的粗粒の微粒炭が増加することから,木炭使用量との関連性を指摘した.
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