研究概要 |
これまでの本研究で長さ1.6mのコア試料の採取に成功したが,海底洞窟の基盤には達していない.そこで18年度はステンレスのコア(直径3cm,肉厚2mm)と持ち手からなる採泥器を使い,堆積物コアの採取を試みた.その結果,大洞窟の堆積物の厚さは約3.4mで,堆積表層から深さ1.25m以深にある淡黄色石灰泥(上限年代はBC3,500年頃)は粗粒物質を多く含むことが分かった.その経緯は以下の通りである. 採泥器は堆積表層から約1.5mまではスムーズに入ったが,そこに入りにくい層があり,そこを超えると再びスムーズに入り,深さ3.4mで基盤に当たった.その状態で堆積物の採取状況を調べたところ,1.5m分しか堆積物が入っていなかった.そして回収した堆積物を調べた結果,コア先端が直径2cm程の粒子で詰まっていた.以上のことから,淡黄色石灰泥に含まれる粗粒物質でコアが詰まり,それより下位の堆積物が入らなかったことが分かったのだ.淡黄色石灰泥に含まれる貝類試料の放射年代値は,淡黄色石灰泥層が土石流堆積物である可能性を示唆する.そうならば,この土石流堆積物の発生はBC3,500年頃に起こった巨大地震に伴う振動によるかもしれない.沖縄周辺では古地震に関する情報がほとんどないので,海底洞窟堆積物は完新世の海洋環境の情報源だけでなく,古地震の情報源になりうるかもしれない. 以上に述べた当該年度の研究で,大洞窟の堆積物の層厚や淡黄色石灰泥層の性状に関する知見が得られた.これらの知見を踏まえて,コアの直径を6cmにして,また本数を増して,洞窟の底まで達する堆積物コアの採取を目指す.
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