研究概要 |
本年度は、昨年度に導入したスパッタリング装置、レーザー加熱用ダイヤモンドアンビルセルを用い、昨年に引き続きこれらの装置を用いた室内実験、放射光実験と回収試料の分析実験を行った。昨年、回収試料実験を行ったFe-FeS系の実験に関し、SPring-8を用いたX線その場観察実験を行い、120GPaまでの融点直下の相変化を調べた。この結果、回収実験とほぼ整合的な回折線の変化が得られている。また、溶融鉄と各種珪酸塩との反応について調べた。核-マントル境界を想定したFe-MgSiO_3系の140GPa-3000Kまでの反応実験では、溶融鉄とポストペロブスカイト相の反応関係と濡れ関係について実験を行い、酸素と珪素がそれぞれ6wt%,4wt%溶けうる事、二面角が67°で有る事が新たに分かった。この事は核物質の一部がマントル最下部に溶融金属相として存在している可能性がある事を示している。また、核中の熱源として重要なカリウムと溶融鉄との反応関係に関して調べた結果、溶融金属鉄中に少なくとも0.8wt%のカリウムが溶解しうることを示した。またこの実験でも%オーダーの酸素が溶融鉄中に入っている事が確認されている。得られた分配係数と現在のマントルカリウム量から核中のカリウム存在度は35ppmである(Hirao et al.,GRL in press)。これは発熱量に換算すると0.23TWのエネルギー源に相等することが分かった。また、固相反応として、マントル最下部までのMgペロブスカイトーポストペロブスカイトと岩塩構造相との鉄分配に関して圧力依存性を調べた。その結果、1600Kの等温条件ではマントル最下部まで大きな変化が見られないがポストペロブスカイト相では相対的に鉄に富む事(Kobayashi et al.,GRL,2005)、また2000Kでは圧力に対して分配係数が減少する事がわかった。
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