研究概要 |
本研究では三宅島2000年噴火の噴出物の地質岩石学的研究からマグマ水蒸気爆発のメカニズム解明をめざしている.これまでに三宅島の噴出物の本質物質と噴煙高度には正の相関があるものの,マグマ物質の量が少なくても破砕度の大きいものは高い噴煙高度を持つことが示され,水の関与による破砕エネルギーへの変換効率の良さが確認された.三宅島噴火に関する論文を3編公表した. 本年度は三宅島2000年噴火と同様なマグマ水蒸気爆発を起こした,北マリアナ諸島アナタハン島の噴火の地質観測と噴出物採取,および,その分析に研究費を使用した.そこでは,細粒の火砕物が火口から溢れ,低温火砕流となって風下に流下した.その形態は三宅島の2000年8月29日に起きたものときわめて酷似し,噴出物も細粒の火山灰層の繰り返しからなることも共通している.アナタハンでは2004年のストロンボリ式噴火後,火口直下に地下水とマグマが接触しやすい環境が形成されたものと考えられる.また,アナタハンの火砕流噴火の火口は海水面下100m程度まで深くなっており火口径がさらに拡大していたことは,海水とマグマとの接触がおこりやすい環境が整っていたことを示している.今後,噴出物の比較研究を進める.アナタハン噴火に関する論文を2編公表した. 一方,マグマ水蒸気爆発の比較研究として浅間山2004年噴火の推移とそのメカニズムについて噴出物を用いて検討した.ここでは2004年9月の噴火開始までは長周期地震やその震源域から想像された火口直下の地下水溜まりが噴火によって消失し,地下水との接触する機会がなくなって,その後のマグマ噴火に移行したと判断される.これらの成果をエクアドルの国際シンポジウムで発表し,外国の研究者と意見交換を行った.
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