研究概要 |
三宅島で2000年7〜8月に起きた水蒸気〜マグマ水蒸気爆発のメカニズムについてその噴出物と,噴火中の気象や地球物理学観測データ,報道や観測班のビデオなどの観測記録から検討を行ってきた.それによると,野外で地質学的に区別された地層の堆積時間を特定することができ,それぞれの地層の堆積を多点観測結果から求めることによって,地層毎の噴出速度を計算することができた.これまで噴火全体の平均的な噴出速度しか得ることができなかった過去の火山学的情報とは精度に格段の違いがある.また,各地層の噴出物コンポーネント分析をすることにより,それぞれの地層を作ったマグマ自身の噴出速度も求めることができる.このようにして求めたマグマの噴出速度と噴煙の高度の関係は,噴煙の物理モデルを満たしている. 一方,各地層について,広域的に粒度分析結果から,地層毎の全体の流度組成を知ることができ,それから破砕度を推定することができた.破砕度はマグマ噴出率が大きくなるほど小さくなる傾向が明らかに認められ,マグマ物質の少ない水蒸気爆発に置いて破砕度が高いことが明らかにされた. 水蒸気爆発で破砕度が高い原因は,マグマの寄与が少なく放出される噴煙の推進力がなかったために,噴出物が粗い粒子が吹きあがらず,火口で衝突を繰り返したことの他に,水の超臨界状態で効果的な破砕が起こった可能性が考えられる.Wohletzのマグマ-水比が0.3であれば破砕度が最も高いという迷信的な実験事実は,三宅島の噴出物からは積極的に示すことができなかった.現象上で三宅島の2000年8月29日噴火とほぼ類似の噴火を起こした2003年6月や2005年7〜8月のアナタハンのマグマ水蒸気爆発では,マグマ物質が細粒火山灰として放出されており,これもWohletzのモデルを支持しない. 三宅島の2000年噴火には地下水の発達状況が大きく関係しており,この考えは噴出物に付着している硫黄同位体比の測定からも支持された.
|