研究概要 |
三宅島2000年噴火の水蒸気〜マグマ水蒸気爆発機構について,噴出物と噴火中の地球物理学観測データやビデオなどの観測記録から検討を行った.また,アナタハン火山の2003-2005年噴火やアカデミーナウク1996年噴火のマグマ水蒸気爆発との噴出物の比較研究を実施した.三宅島では,各爆発イベントの火山灰層を多くの露頭で識別することができ,2次堆積物やマッドクラックの有無,粒度,色調などによって,火山灰の堆積時間を特定することができた.また,その分布や粒度・構成物種分析から,マグマの噴出量や破砕度を求めることができ,噴出物全体やマグマ噴出率をイベント毎に算出することができた.今回の噴出物に関する詳細な物理量データは,これまでの多くの噴火では噴火全体についてのみ噴出率等の情報があった状態とは異なり,今後の火山爆発モデルを作成する上での極めて重要なパラメータとなりうる. マグマ噴出率と有色噴煙高度には正の相関があり,噴出物の破砕度はマグマ噴出率と負の相関にある.これは,マグマ物質の少ない水蒸気爆発に置いて破砕度が最も高いことを示している.ここで破砕度が高い原因は,マグマの寄与(熱エネルギー)が少なく,上方に放出される噴出物が浮力を稼げなかったために,落下してくる粗粒粒子が火口で衝突を繰り返したこと,水の超臨界状態で爆発に伴いケイ酸塩に対して破砕現象が効果的に起きたという2つのモデルが考えられる.Wohletzが実験により提案したマグマ-水比が0.3であれば熱/破壊エネルギーの変換効率が最大というモデルは,三宅島噴火の噴出物からは確認できなかった. 三宅島の2000年噴火には地下水が大きく関与しており,これは噴出物の形態や噴出物に付着している物質の硫黄同位体比の測定からも支持された.今後,噴出環境が異なるアナタハンやアカデミーナウクの噴出物との比較研究を通じて,噴火発生場に関する研究をさらに継続する必要がある.
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