研究概要 |
形成期における地球内部の大規模成層構造の形成とその後のマントルの進化を解明する上で,マグマ物性の研究は必須である。しかしながら,マグマ物性への圧力効果の研究は研究手法の困難さから限られている。本研究では高圧下においてマグマの密度を測定する新しい手法である高圧X線吸収法の開発を行っている。高圧X線吸収法の利点は任意の温度圧力でメルトの密度を測定できる点であり,メルトの熱膨張率や圧縮率を正確に決定することが期待できる。我々はX線に対し透明で,ほとんどの珪酸塩メルトと化学的に不活性であり,かつ,高硬度で圧縮による変形が少ないダイヤモンドを試料容器に用いて放射光からの高輝度単色X線と組み合わせることにより,高圧容器の中の珪酸塩メルトのX線吸収プロファイルの測定し密度を求めることに成功した。高圧発生はキュービックプレスを用いて行い,3GPa・1900Kまでの条件でメルトの密度測定が可能となった。 本研究では中央海嶺玄武岩(MORB)組成のガラスを出発試料に実験を行い,ガラスとメルトについて高温高圧下で密度測定を行った。玄武岩組成のガラスとメルトの密度データをBirch-Murnaghanの状態方程式に当てはめて体積弾性率をもとめた結果,ガラスに対しては300KでK_0=19±3GPa,メルトに対しては1673Kで体積弾性率K_0=30±3GPaという結果を得た。X線吸収法によって得られたMORB組成メルトの密度データ自体は従来の試料浮沈法より精度が高く,体積弾性率も精度良く決まっているのであるが,測定圧力範囲が狭いため期待した精度に届いていない。今後,圧力領域をより高圧に延ばすことにより,地球深部に適用できる高精度のマグマの状態方程式の確立が期待できる。
|