研究概要 |
地球や惑星の深部で岩石が融解することにより発生するマグマは,火山現象のみならず,地球や惑星の内部構造の進化に密接に関連する。惑星内部の高温高圧条件におけるマグマ物性に関する我々の知識は乏しく,基本的物性値である密度でさえ精度よく求められていない。本研究では高圧下においてマグマの密度を測定する新しい手法である高圧X線吸収法の開発を行っている。高圧X線吸収法の利点は任意の温度圧力でメルトの密度を測定できる点であり,メルトの熱膨張率や圧縮率を正確に決定することが期待できる。我々はX線に対し透明で,ほとんどの珪酸塩メルトと化学的に不活性であり,かつ,高硬度で圧縮による変形が少ないダイヤモンドを試料容器に用いて放射光からの高輝度単色X線と組み合わせることにより,高圧容器の中の玄武岩組成メルトのX線吸収プロファイルの測定し密度を求めることに成功した。高温高圧X線球種実験はSPring-8のBL22XUでキュービックプレスを用いて行っている。平成17年度には測定圧力を4GPaまでのばし,室温から2200Kまでの条件で玄武岩組成のガラスとメルトの密度を測定した。この結果,これまでの浮沈法による密度測定では不可能であった,玄武岩メルトの等温圧縮曲線を得ることができた。1720Kの圧縮曲線から求めた玄武岩質マグマの体積弾性率は28.4±0.6GPaであり,結晶と同等の精度で体積弾性率を議論することが可能となった。
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