研究概要 |
高圧鉱物のレオロジーの研究はその困難さもあって極めて貧弱な状態である.レオロジー研究を進展させるために,X線トポグラフィ法を高圧下で利用する方法を開発することが本研究の目的である.初年度は放射光施設SPring-8において,測定系の検討や高圧セルの改良など様々な基礎的な実験を行った.高圧装置には川井型マルチアンビル高圧装置を使い,検出器としては様々な試みを行ったが最終的にCCDカメラを使った.高圧下でのトポグラフィ法の大きな実験的困難は初段および2段目のアンビルの遮蔽により回折スポットが装置外に出てこられる範囲がかなり狭いことである.そのため試料結晶の最初の位置決めと加圧中に回転させない工夫が不可欠であるが,この点はまだ試行錯誤の状態である.これまでに得られた成果としては,1)試料として水晶,ルチル,オリビンの単結晶を使って実際に室温高圧下での観察に成功した.2)高圧高温実験も行い,500度程度までの実験に成功した.3)セクショントポグラフィ法が高圧実験に適していることを見いだした. しかしいくつかの問題点も出てきた.1つは試料の変形の問題で,ある程度圧力が上がった段階で急速にラウエスポットが広がる様子が観察され,回収された試料は多結晶化していた.これには高圧セルの改良が必要である.また加熱中に観察されたトポグラフィ像の変化から試料内温度勾配が結構大きいことが推定された.これらは次年度で解決していく.またオリビンの天然結晶を試料として使うと元々の変形テクスチャーがかなり残っているようで,ラウエスポットがひどく変形しており,試料として適当ではない.そのため本年度に導入した単結晶育成装置を使って,オリビン等の単結晶試料を自前で合成して,試料として供する.
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