太陽系形成初期の記録は、その時期に形成された始原限石(コンドライト隕石)や宇宙塵にしか残されていない。本研究では始原隕石中の証拠組織とその構成物質の同位体比から、原始太陽系星雲の散逸時期の推定を研究目的とする。 初年度である今年は、この研究課題遂行に最も重要な炭酸塩鉱物の形成年代を二次イオン質量分析計を用い決定する手法の確立を目指した。Crの同位体比とMn/Cr元素比を正確に求めるための二次イオン質量分析計の設定を作成した。また、標準試料となるサンカルロスオリビンのMn/Cr元素比をICP分析により求めた。その後、さやま炭素質コンドライトの炭酸塩鉱物の形成年代を測定し、太陽系最古の物質CAIが形成されてから約1000万年後であり、分化した天体であるアングライト母天体が形成される約800万年後であることがわかった(H16日本鉱物学会年会のシンポジウム「太陽系始原物質科学のフロンティア:鉱物科学の役割」で発表)。また、ビガラノ炭素質コンドライト中のファイヤライトが、母天体中の水質変成で形成された時期を求めた。その結果、水質変成が広範囲に起こったCMタイプの母天体よりも、水質変成程度が低いCVタイプの母天体内部での変成の方が早い時期に起こっていたことがわかった。理論モデルでは原始太陽系星雲の散逸により、乱流が抑えられ、重力不安定性による微惑星形成が起こりやすくなることが分かった(H16日本惑星科学会発表)。
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