研究概要 |
固液界面における酸化還元反応によって金属樹が生成する過程は,非平衡過程であり,磁場による著しい形状変化を示すことを明らかにしてきた.反磁性種のみからなる金属亜鉛-銀イオン系で観測された銀樹の配向は,SEMやXRD等の観測より形状磁気異方性によるものと判断した(A.Katsuki et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.2005,78(7),1251-1255).これは形状磁気異方性による配向と明らかになったものとしては,恐らく初めての報告である.この形状磁気異方性による配向を詳細に検討するために,反磁性種であるAl棒とCu棒による配向を観測した.水中に浮遊させた状態では,どちらも0.3Tで配向することがわかった.このように異方性がないアモルファス状の金属棒でも配向することが明らかになった.磁場勾配がほとんど無視できる条件で,引き続き研究を行っている. "その場"観測の結果では,高さ0.5mm程度の銀樹が歳差運動をしながら成長していることがわかった(A.Katsuki, Y.Tanimoto, Chem.Lett.2005,34(5),726-727)、この現象は化学ポテンシャルが力学的エネルギーに変換しており,非常に重要である.その速さの濃度依存性,磁場強度依存性から,磁場強度が8Tで溶液中の銀イオン濃度が0.04mol/dm^3のとき約1N/cm^3の力が銀樹に作用していることがわかった.現在,詳細な研究結果をまとめているところである. 三次元で成長させた銀樹の形状から,磁場中では形状が球状になることがわかった.この現象は磁場勾配に依存せず,境界面で顕著に見られることから,磁化率勾配による力と考えられる.これは反磁性種に作用する磁気力としては全く新しいものであり,現在,この現象についてアクセプト,および投稿中の状態である.
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