研究概要 |
強磁場印加によって非線形現象,非平衡過程に摂動を与えることによって,従来法では困難であった反磁性種の反応制御,さらに応用として新機能性材料の作成に展開することを目指している.一連の研究の中で,本研究では磁化率勾配力による結晶成長制御の可能性と磁場による擬無重力状態では界面に働く表面張力の効果について検討を行なった. ・磁化率勾配力による結晶成長制御(A.Katsuki, et al.,Sci.Tech.Adv.Mat.,7(2006)385) 近年,磁場勾配による磁気力では説明できない現象が見出され,MHD機構以外の力が示唆されている.本研究では,準備的な実験として,反磁性種であるリゾチームの結晶成長における磁場効果について検討を行なった.その結果,零磁場下ではリゾチーム結晶は針状で蝶の形状に成長するのに対し,15Tの均一磁場下では球状に成長することが分かった.この結果は,強磁場下ではこれまで無視されてきた磁化率勾配の効果が現れる可能性を示した. ・磁場による水滴および水膜の制御(A.Katsuki, et al.,Chem.Lett.,36(2007)306) 界面では磁場効果が顕著になることから,界面に働く表面張力を磁場で制御できれば非常に有効であると思われる.本研究では表面張力の影響を受ける水滴の形状および質量に対する磁場効果について検討を行なった.擬微小重力条件では,質量で約6倍に増加した.逆に磁場による過重力条件下では約1/2に減少した.これらの変化は水滴に対する見かけ上の重力(地球の重力+磁気力)の変化で説明することができた.さらに,擬微小重力条件下で水膜が安定に生成することを見出した.この方法は,基盤無しの状態で薄膜が地上でできることを示しており,表面張力の制御による新しい材料作成方法として発展が期待できる.
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