研究概要 |
非平衡過程は一般の化学反応において平衡状態に到達するまでに通常含まれている過程である.本研究では,磁場効果を制御する要因の一つとして非平衡状態に注目した.平衡状態では熱エネルギーに比べて小さい磁気エネルギーも非平衡状態に対する摂動として十分に作用することが予想される. 反磁性種のみからなる反応系から生成した金属樹について強磁場を印加したところ,磁気的に等方的な結晶にもかかわらず,磁場に対して約30度傾けて配向する現象が観測された.これは形状磁気異方性によるものであることを解明した.すなわち,反磁性種についても形状で配向できる可能性が示された.この現象は固液界面で非平衡状態を起こさせることで磁場効果が増強できること,磁気異方性が小さい反磁性種も形状を異方的にすることで配向が起こることを示しており,大部分の物質が反磁性種であることから幅広い応用が期待される. その研究過程で銀樹の歳差運動も観測され,その機構がboundary-assisted MHDであることを解明した.さらに界面に対する磁場効果について,結晶形状変化が固液界面における磁気力によるものであることを示し,磁場による見かけ上の重力制御により水滴形状変化,液膜の形成ができることを示した. 非平衡状態の磁場効果は始まったばかりで前述の反応に対する磁場の影響についてはまだ不明な点が多い.本研究のように磁気異方性のない反磁性種の顕著な磁場効果の報告は内外にもほとんどない.これらの基礎的な反応に対する磁場効果の研究は,磁場による新しい反応場の構築,反応制御,および形態制御等につながるものである.
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