研究分担者 |
又賀 のぼる (財)レーザー技術総合研究所, レーザーバイオ科学研究チーム, チームリーダー (30029368)
谷口 誠治 (財)レーザー技術総合研究所, レーザーバイオ科学研究チーム, 研究員 (00342725)
今元 泰 奈良先端技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (80263200)
海野 雅司 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (50255428)
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研究概要 |
空間分解蛍光アップコンバージョン測定装置について、励起光照射および蛍光集光部に反射型対物レンズを用いることで空間分解能、測定効率を向上させるためのシステム改良を行った結果、時間分解能約400fs、空間分解能約2μmにまで向上した。更にこのシステムによるPYP単結晶のフェムト秒蛍光ダイナミクスの観測に初めて成功した。その結果PYP単結晶の蛍光は寿命1.4ps、10pおよび長寿命成分(>20ps)の3成分指数関数により減衰することがわかった。この結果は溶液での観測値に比べ全体的に遅い減衰を示しており、特に溶液中で見られた寿命450fsの超高速減衰成分は単結晶では観測されておらず、光反応ダイナミクスは初期異性化過程においても異なっている事が初めて明らかとなった。また蛍光ダイナミクスの結晶軸に対する励起光方向依存性について検討した、蛍光ダイナミクスに変化は観測されなかったが、結晶の短軸方向の場合と長軸方向の場合で、短軸/長軸方向の蛍光強度比は6以上と大きく異なっている事がわかった。この強度比は結晶構造解析から、結晶中の発色団の配列を考慮することにより説明できた。 PYP単結晶のマイクロラマン測定を行い、1000cm^<-1>-1700cm^<-1>の観測範囲においてピーク位置に溶液中との変化は見られなかったが、一部のピーク強度比に違いが観測された。また励起光偏向方向に対する散乱強度比に大きな差(〜8倍)がみられたが、蛍光ダイナミクスと同様結晶中の発色団の配列に依存しているものと考えられる。 PYPおよびミュータント(E46Q,T50V,E46Q/T50V,R52Q,P68A,E46Q/R52Q)の溶液中における時間分解蛍光異方性ついて検討を行い、いずれも異方性は溶液中の一般的な値(〜0.4)であり、また時間変化も観測されなかった。この結果からPYPでは縮重励起状態の存在は否定される。
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