研究概要 |
3,4-ジ-t-ブチルチオフェン1-オキシド(1)と一塩化硫黄を反応させた後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させると1,2,7-トリチアノルボルネンendo-7-オキシド(2)が得られた。反応停止剤としてメタノールやt-ブタノールを用いると、3,4-ジ-t-ブチルチオフェンが収率よく得られた。一方、2,3-ジメチル-2-ブテンあるいはモルホリンで反応を停止させると、反応中間体を途中で捕獲した2-位に(2-クロロ-1,1,2,2-テトラメチル)エチルジスルファニルあるいはモルホリノジスルファニル基が結合した3,4-ジ-t-ブチル-5-クロロ-2,5-ジヒドロチオフェン1-オキシドを得た。2をジメチルジキシランで酸化すると1,2,7-トリチアノルボルネン2,7-ジオキシドの2種のジアステレオマー混合物(3)(ジアステレオマー比7:1)が定量的に得られた。3を加熱すると、S_3と1のC=C結合部が[3+2]環化付加して生成したトリチオラン4が得られた。これは、熱反応によって3から1とS_2Oが生成し、S_2Oが不均化してS_3とSO_2となり、S_3が1と反応して4が得られたと考えられる。また、3とノルボルネンを反応させるとノルボルネントリチオランが収率よく生成した。一方、3と2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンあるいは2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンの反応では、S_2Oの捕獲生成物である3,6-ジヒドロ-1,2-ジチイン1-オキシドが生成した。S_2Oの不均化反応の詳細を検討するため、DFT計算を行った。本不均化反応は発熱反応であり、熱力学的に有利な反応であることがわかった。また、S_2Oがもう一分子のSO_2のS=S結合部に[3+2]環化付加して5員環ダイマーとなった後、逆[3+2]環化付加でS_3とS_2Oが生成する機構を支持する結果が得られた。
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