研究概要 |
2,4-ペンタンジオールおよびその誘導体を基質と試薬のキラル架橋として用いると、多様な反応が高立体選択的に進行する。高速反応を主とした反応を検討し、通常では得られない光学活性物質を合成する、高速反応における分子内反応の選択性要因を解明する、2点を目的として研究を行った。試薬部としてジアゾ基を用い、ロジウム触媒を反応させると生成したカルベノイドは架橋された芳香族基の位置を強く認識し、官能基選択性を逆転させることが可能であった。この知見によりフェノールからシクロヘプタトリエノールが合成できた。また、通常芳香族と反応するカルベノイドがCH挿入した。官能基選択性は反応速度に依存するが高速反応でも立体選択性は完全に維持されることを見いだした。芳香族部に適切に置換基を導入して位置選択性を制御すると、遠隔位に立体選択的反応をした。 キラル架橋を用いる分子内ラジカル付加反応の立体選択性は低く、キラル架橋反応の中では例外であった。架橋部の立体化学と選択性の関係から、分子内付加がラジカル炭素の立体反転よりも速いことに起因することを証明した。さらに高速ラジカル付加反応に置換基を組み込んで、ラジカルを安定化し、分子内反応速度を抑制した結果、立体選択性は10%から99%以上まで向上し、コンフォメーション変化に起因するCurtin-Hammettのボーダーラインを挟んだ立体選択性変化であることを実証した。 PD架橋ケテン・オレフィン付加の立体選択性に強い構造依存性が見いだされた。オレフィン部が環状、α置換鎖状の場合は従来通り95%以上の立体選択性があるのに対し、α無置換の場合は10%程度と下がることがわかった。この低い選択性もまた温度依存性がほとんど無く、-50度から270度までほとんど変化しない。立体異性体を生成する中間体が異なることまでは決定したが、その違いを生む機構に関しては解決できず、以降の課題として残った。
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