有機ケイ素配位子、有機ゲルマニウム配位子を有するパラジウム、白金の平面四核錯体の合成と構造決定を行なった。シリル架橋、ゲルミル架橋白金二核錯体を独自の方法によって合成し、その反応経路について詳細に検討した。すなわち、トリシクロヘキシルホスフィン配位子を有する0価白金錯体とジアリールシラン、ジアリールゲルマンとを反応させることによって、架橋シリルおよび架橋ゲルミル配位子で連結された二個の1価白金からなる二核白金錯体を合成することができた。架橋シリル二核白金錯体の生成反応においては、中間に生成する非対称型の二核錯体の存在を確認することができ、この二核錯体が有機ケイ素化合物と反応して熱力学的に安定な対称型二核錯体を生成していることを明らかにした。 二核構造を有する架橋ジフェニルシリル基白金錯体と架橋ジフェニルゲルミル基二核白金錯体をキレート性のビスホスフィンと混合加熱したところ、それぞれ3個の架橋シリレン、架橋ゲルミレン配位子を有する平面型四核白金錯体が生成した。これらの錯体はいずれもX線結晶構造解析によって分子構造を明確に決定した。架橋シリレン四核錯体と架橋ゲルミレン四核錯体とでは白金-ケイ素、白金ゲルマニウム結合の長さの違いによって、その分子サイズが異なることが明確になった。 架橋ゲルミレン四核白金錯体の生成機構について、モデル錯体を用いて検討を行った。キレートイホスフィン配位子を有する単核0価白金錯体と二個のゲルミル配位子を有する単核二価白金錯体との反応を行なったところ、これら錯体の消失とともに、四核錯体が一部生成していることが、溶液のスペクトル変化を観察することによってわかった。0価錯体は溶液中では一部二核0価錯体との平衡にあることから、このような錯体が中間体として四核錯体の生成に関わっていることが理解できた。
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