研究概要 |
本研究は、最近私達が見いだした結晶相反応-[(Cp^*Rh)_2(μ-CH_2)_2(μ-O_2SSO_2)](1a,Cp^*(η^5-C_5Me_5))と[(Cp^*Rh)_2(μ-CH_2)_2(μ-OSOSO_2)](2a)との間の異性化(正反応が光反応、逆反応が暗反応で進行)-を基礎にして、結晶状態で光応答機能を持つ金属硫黄錯体の合成と結晶相光異性化反応の解明を主たる目的とした。 本年度は,結晶相で光応答機能を持つ一連の錯体を合成するため,また今後の光応答機能解明研究のため錯体1aをプロトタイプにしてCp^*(η^5-C_5Me_5)環のひとつのメチル基を大きさの異なるアルキル基や光感応性もつアリル基に置換した1a誘導体の合成を行った。またこれらの一部の結晶構造も,明らかにした。更に結晶相光反応における速度および選択的酸素移動反応とμ-O_2SSO_2周りの空間の形状・大きさあるいはCp^*配位子のダイナミックスとの関連性を調べた。 結晶相反応の起る反応空間をより広げる配位子としてCp^*(η^5-C_5Me_5)の換わりにCp^*-Et(η^5-C_5Me_4Et),Cp^*-φ)(η^5-C_5Me_4Ph)およびCp^*-CH_2Naph-1(η^5-C_5Me_4CH_2C_<10>H_7-1)を用いて、それぞれ対応するμ-O_2SSO_2錯体,1b,1cおよび1dを合成した。1bと1cに関しては,X線回折で結晶構造を明らかにした。1bの結晶は,monoclinicで空間群(P21/n)およびユニットセル中の分子の数(Z=4)であり,分子の配列も1aの結晶とほぼ同じであった。一方,1cの結晶は,triclinicで空間群P1^^-,Z=2で1aとは全く異なる結晶構造であることが分かった。そこで1aと1bの結晶混合試料による光反応の相対的な速さを比較した。その結果,μ-O_2SSO_2周りの空間の体積の小さい1a(6.510Å^3)の方が大きな1b(9.462Å^3)より速いことが分かった。このことより,これら2つの結晶の反応の速さには空間の体積は,影響していないことが判明した。
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