研究概要 |
銅(II)-hydroperoxo錯体は,アルカンの水酸化を行う銅酵素であるdopamine β monooxygenase(DβM)やpeptidylglycine α-hydroxylating monooxygenase(PHM)などの重要な活性反応中間体であると提案されている。これらのモデル化合物として様々な単核銅(II)-ヒドロペルオキソ錯体が報告されているが,上記機能を持つ錯体の報告例はない。一方,最近二核銅(II)-hydroperoxo錯体は,アレン類の水酸化反応を行うとの報告が出されたが,その実験的証拠はない。 そこで本研究では銅(II)-hydroperoxo錯体の反応性を明らかにする目的で,立体的にかさ高い三脚型四座配位子(Ph_3-tia=tris(1-methyl-2-Phenyl-4-imidazolylmethyl)amine)を用い(μ-1,1-hydroperoxo)(μ-hydroxo)二核銅(II)錯体([Cu_2(Ph_3-tia)_2(OOH)(OH)]^<2+>)の単離と構造解析に成功し,その構造と反応性相関を詳細に調べた。その結果,下記の興味ある結果を得ている。1)hydroperoxo基は,配位子が作りだしている疎水的環境に囲まれており,さらに配位していないイミダゾリル基との強固な水素結合により安定化されていること,2)固体状態での分解で,配位子に反応プローブとして組込んだフェニル基の水酸化よりも,サイドアーム部のメチレン基が水酸化されること,などを見出した。これらの実験事実から,この水酸化反応は,ヒドロペルオキソ基とメチレン基の水素原子との協奏的反応機構で進行していることを提案した(J.Am.Chem.Soc.2005,127,5212-5223)。
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