研究概要 |
前年度までにチアカリックスアレーン-p-スルホン酸(TCAS)二分子がそのスルフィドにより4個のAg(I)に配位し,Double-cone型錯体を与えること.さらにその中心部にLn(III)を取り込み,8個のフェノール性酸素配位環境を提供していることを明らかにしている.今年度はTCAS-Ag(I)-Ln(III)三元系長寿命近赤外発光プローブを実現するための条件検討を行った.具本的にはLn(III)としてNd(III),Yb(III),Er(III)を採用し,その生成pH条件,発光スペクトル,発光化学種の組成,発光量子収率を検討した.Nd(III)はTCASとはpH8.0以上でほぼ定量的に1:1錯体を生成する.一方,Ag(I)の存在下,pH5から三元錯体を生成した.錯体は近赤外領域,1050nmにNd(III)中心の発光を示した.発光量子収率をcalcein-Nd(III)を対照に測定したところ,その1.8倍(=3.1×10^<-4>)となり,本三元錯体が水溶液中での極めて有望な近赤外発光錯体であることがわかった.TCAS-Ag(I)-Tb(III)系でのモル比法,ES-MS測定や寿命解析結果を援用すれば,pH8.0付近からLn^<III>Ag^I_4TCAS_2型の長寿錯体が生成していると予想できる.一方,Yb(III)は980nmに発光を示し,同じく近赤外発光プローブとしての可能性が示された.なおEr(III)に関してはその発光領域が現有InGaAs半導体検出器の測定範囲外であるため,Er^<III>Ag^I_4TCAS_2型錯体の発光は未確認である.
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