研究概要 |
本研究では光照射により局所的な電場増強効果を示す金属探針を用い,その先端にフェムト秒レーザーを集光照射することにより局所的に対象試料をアブレーションさせ,そこからの発光を集光・分光分析し,さらには質量分析するという着想に基づいた表面微小領域元素分析法の開発を目的としている。 まず近接場光学顕微鏡をベースに装置を製作した。電解研磨により先端を先鋭化したタングステン探針をチューニングフォークに接着し,シアフォース制御で試料上約10nmの距離まで近接させる。探針先端に探針の軸に対してほぼ垂直方向から直線偏光させたフェムト秒レーザーを集光・照射し,増強電場によってアブレーションが誘起され,そこから生じた原子発光を対物レンズで集光し分光器・CCDにより検出する。試料はカバーグラス上に約50nm厚で真空蒸着したアルミまたは金である。 レーザー強度はそれ自身で試料をアブレーションさせない13mJ/cm^2と決定した。タングステン探針を試料表面から10nmの距離に近接し,レーザーを照射しながら試料薄膜上を走査速度1μm/sec,走査間隔675nmで掃引した。その結果を原子間力顕微鏡により測定したところ,この溝状の凹凸は,幅50nm,深さ10nm程度であり,金及びアルミどちらの試料に対しても同様の結果が得られた。また,この凹凸像は同一走査条件においてもレーザー照射下でのみ得られることから,物理的な接触ではなくレーザーアブレーションによる加工であると判断した。現在報告されているフェムト秒レーザー照射でのアブレーションサイズの最小値は,数百nmΦの領域であるが,今回の試みにより探針の電場増強効果により一桁高い空間分解能でアブレーションを達成することに成功した。発生した原子発光スペクトルは現在取得中である。
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