今年度は、超音波を用いた粒子分離法の確立を目指して研究を展開した。その結果、国内外を問わず、始めて超音波とそれに直交する流れ特性を利用した粒子分離法を開発することに成功した。この方法を用いると、密度が異なるポリスチレンとアクリル系のポリマー粒子だけでなく、圧縮率が異なるポリスチレンとポリビニルトルエン粒子を分離することができる。また、音場の設計として、一方向からの超音波を他方の端で反射させることによる定在波発生と両方から位相の異なる超音波を発生させ、それらの干渉により定在波の節を移動させる方法を確立した。その結果、いずれの方法においても粒子のトラッピングが可能であることがわかった。さらに、一度トラップした粒子を音場の強さを変化させることによって、その流出時間を制御できることを示した。 また、狭いチャンネル内を粒子が移動する際の静水的特性についても詳細に検討した。一つは静水揚力に関する検討である。粒子が壁際を移動するとき、壁から離れようとする静水揚力を受けることが知られているが、定量的に測定、議論した例はない。電場によって粒子を壁に引きつけ、静水揚力と拡散力を見積もる実験を行ったところ、マイクロメーター程度の粒子では、前者の効果が大きく、サブマイクロメーターでは後者の寄与が大きくなることがわかった。また、粒子のように拡散が本質的に小さな物質では、その拡散特性から流れプロファイルをそのまま反映して移動することがわかった。この場合、最大流速と共に移動する粒子も存在し、その結果流れの下流で検出を行うと、2カ所にピークを与えることが判明した。この現象をシミュレーションと実験によって詳細に検討し、新しく分離系における拡散特性を示す指標を提案することができた。また、従来広く用いられているTaylor法に比べて容易に物質の拡散係数を評価できる新しい手法へと発展させた。
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