|
本年度は、アミンがフェニル基を介して結合した有機ハイスピン化合物の酸化状態の解析に電子移動ストップトフロー法を適用して研究を行った。具体的には、トリフェニルアミンを基盤としてアミンが2または3個重合した構造を基にした各種誘導体化合物について、1電子または2電子、3電子酸化を行った場合の時間分解可視吸収スペクトルを、電子移動ストップトフロー法を用いて測定した。その結果、各酸化状態の電子状態や安定性に対する置換基の影響を系統的に解析できた。また、酸化状態の安定性に関する情報を与えるサイクリックボルタンメトリーでは非常に短寿命で検出できないような多電子酸化状態に関しても、電子移動ストップトフロー法では、電子状態と安定性に関して有効な情報が得られることがわかった。
そのほかに、トリフェニルアミンを基盤としたビスピコリルアミノ配位子を持つ銅およびパラジウムニ核錯体についても、中心となるトリフェニルアミンのカチオンラジカルと金属間の分子内電子移動相互作用を検討する目的で合成し検討した。電子移動ストップトフロー法を用いて測定した結果、酸化状態の安定性や電子状態に関する知見を得るとともに、酸化状態の安定化構造に関しても議論した。
さらに、水溶液系の反応解析への応用として、金属ナノ粒子の形成過程へのストップトフロー法の応用に関しても検討を着手した。これに関しては、未だまとまった成果は得られていないが、金属イオンの還元から凝集に至る初期過程を対象とした解析を今後すすめていきたいと考えている。
|
