研究課題
基盤研究(B)
有機相中の親水性イオンが水相に向かって界面を横切るとき、イオンは弱い有機溶媒和状態(反応性の高い状態)から強い水和状態(反応性の低い状態)へと変化する。いま、界面を横切りつつあるイオンが、水和の完成に先んじて、水相中の化学種と反応するとしたら、この反応は水相中に比べて容易に進行することになる("反応活性イオン"と呼ぶ)。本研究では、水相|有機相界面や水相|液膜界面での反応の観察のための新測定法を開発するとともに、イオンや電子(電荷)の界面移動の様子を、開発した新測定法、液液界面電荷移動ボルタンメトリー、液液界面全電解法、液液分配法などによって測定し、その結果に立脚して、(1)水溶液|有機溶液界面がなければ進行しない有機溶液内反応、(2)水溶液|有機溶液(膜)界面イオン移動反応による有機溶液内化学種の変態と酸化還元挙動の変化を調査し、有機溶液(膜)内反応におよぼす有機溶液と接する水溶液の役割の解明をした。また、(3)界面電位差が印加された水相|有機相界面で生成する"反応活性イオン"が関わると考えられる反応を探査して、同反応の特異性を考察した。さらに、(4)上記の(1)〜(3)の研究の基盤として、著者らが開発した手法による親水性イオンの水相|有機相(膜相)界面移動自由エネルギーの決定、キレート抽出反応機構の電気化学的解明、脂質二分子膜を介したイオン移動反応の解析なども行った。一方、(5)以上を総合して、新しい概念の分離・分析法の可能性を追求した。本研究で開発した新測定法は、(1)イオン移動電流の検出感度が通常より1桁高く、限界電流の回転数依存性から界面反応の可逆性を判断でき、界面反応生成物を同定できる回転液膜ディスク電極および回転液膜リング-液膜ディスク電極、および(2)高精度な水相|有機相界面イオン移動全電解を超迅速に達成できるテフロン多孔質管利用迅速水溶液|有機溶液界面全電解セルである。
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