研究概要 |
水溶液内の疎水構造型イオン会合が、可逆反応の一つとして普遍的に重要であり、生命現象における重要な役割を果たしている。このイオン会合を平衡論的解析手法により、系統的に調べ、反応に及ぼす各種因子を見出し、より選択的、より反応的な高機能試薬設計・開発を第一義的目的とし、これらの試薬を用いる新しい分離法,分析法開発を目的とした。 1.新しいイオン会合反応解析法開発とそれを用いた比較的弱いイオン会合反応解析:主に溶媒効果 新たに開発したイオン会合平衡解析手法により広範なイオン会合反応を解析し,基礎データを集積した。測定は,第4級アンモニウムイオンNR_4^+(R:メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2-メチルブチル基)を陽イオン試薬として用い、対イオンとして-1価、2価、3価、4価の無機イオンを用いてイオン会合に及ぼす溶媒効果について詳細な検討をおこなった。ジオキサン-水混合溶媒中で約250種のイオン会合平衡定数を求め、Bjerrum式からの乖離について詳細な検討をおこなった。その結果、イオン会合定数は、Bjerrum式からの予測とは大きくかけ離れ、溶媒の誘電率以外の寄与が大きいことを示した。アセトニトリル-水混合溶媒中のイオン会合平衡についても解析し、エタノール-水混合溶媒とほぼ同程度であるが、ジオキサン混合溶媒中よりも小さいことがわかった。また、陽イオン中のアルキル基の鎖長の違いから、イオン会合に寄与する疎水性の影響、無機イオンの価数の違いから静電的相互作用の寄与を見積もることができた。これらの情報は、イオン会合試薬設計の重要な指針となる。 2.イオン周囲の環境制御型高選択的イオン会合試薬の合成開発:疎水的陰イオンとのイオン会合 水溶液中で陰イオン(陰イオン界面活性剤)と反応し、色調変化を示すソルバトクロミズム陽イオン性試薬の設計・合成を行なった。縮合環に陽イオン性基を持つシアニン色素イオンが見いだされ、陰イオン界面活性剤定量に応用された。また、ケイ酸、リン酸イオンのヘテロポリ酸とトリフェニルメタン系陽イオン試薬とのイオン会合を利用する高感度定量法の開発に成功した。
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