研究概要 |
本研究は、小型で持ち運び可能で、多成分を同時に測定できる表面プラズモン共鳴現象を利用する免疫センサを開発し、人間の持つアレルギー体性を迅速に診断する測定法を開発しようとするものである。本年度は、アレルギーにより生成されるヒスタミンを表面プラズモン(SPR)センサにより測定する方法を確立するとともに、マイクロフローセルの試作および5チャンネルの表面プラズモン共鳴センサの試作を行った。成果は以下の通りである。 (1)種々のタンパク質のヒスタミンコンジュゲートを合成し、これらをSPRセンサの金薄膜に固定化し、抗ヒスタミン抗体に対する結合を評価した。その結果、STI(soybean Trypsin inhibitor)を用いるタンパク質コンジュゲートはペプシンによる分解を受けないので、センサ表面のコンジュゲートの脱離なしに、生成するコンジュゲート-抗体複合体を解離させうることがわかった。その結果、センサ金薄コンジュゲート固定化膜の繰り返し利用が可能であった。 (2)STIタンパク質コンジュゲートを固定化したSPRセンサを用いて、間接競合法によりヒスタミンの免疫測定を行った結果、約1ppbの検出下限濃度を達成した。 (3)ポリジメチルシロキサンを用いて流路幅1mm、長さ10mm、深さ20,40,100μmのマイクロチャンネルフローセルを試作し、シュックロースに対するSPRセンサの感度を測定した。その結果、深さが浅くなるにつれて、感度が増加する事が分かった。 (4)波長770nmのLED光源、2042チャンネルのリニアCCD素子を利用して、5チャンネルのSPRセンサを試作した。センサスポットが直径5mmで、1mm間隔に直線状に5つ並ぶものを試作した。各スポット部分に穴を開けたシリコンシートを金薄膜にセットしたバッチ式セルを作製し、シュックロースを試料として、SPRの光強度を測定した。その結果、シュックロース濃度3%以上において、光強度は濃度の増加に応じて増加した。
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