研究概要 |
(1)ノルゾアンタミンの立体選択的全合成 ゾアンタミン系アルカロイドは7個の環が縮環した極めて特異な環状立体構造を有する海産天然物で,特にノルゾアンタミンはモデルマウスの骨密度や骨重量の低下を強力に抑制することから,新しい骨粗鬆症治療薬として内外から非常に期待されている化合物である。一方,ゾアンタミンは強力な鎮痛活性を有することが知られている。このような背景からゾアンタミン系アルカロイドの全合成研究が内外で活発に展開されているが,非常に複雑な環状立体構造を有するため難航していた。我々は,三成分連結反応とフラン環の光増感酸素酸化反応を機軸とするトリエンの合成および分子内Diels-Alder反応をキーステップとする独自の合成ルートを立案し,ノルゾアンタミンの化学合成に世界で初めて成功した。本合成は(R)-5-メチルシクロヘキセノンから出発し41工程を経て完成したものであるが,各工程の平均収率は92%という高効率的な全合成である。これらの成果をScienceに発表したところ内外から大きな反響と高い評価が寄せられた。 (2)ジンコフォリンの不斉全合成 ジンコフォリンは亜鉛イオンを特異的に取り込み膜輸送するユニークな抗生物質で多くのメチル基と水酸基が隣接した複雑な立体構造を有する。独自に開発した鎖状有機分子構築法を駆使してジンコフォリンの不斉全合成を達成し,成果をAngew.Chem.Int.Ed.に発表した。 (3)チランダリジジンの不斉全合成 複雑な化学構造を有し多環状高次構造天然物として知られるテトラミン酸系抗生物質チランダリジジンの最初の全合成を達成し,成果をAngew.Chem.Int.Ed.に発表した。
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