研究概要 |
(1)ノルゾアンタミン及びゾアンタミンの不斉全合成 骨粗鬆症モデルマウスの骨密度や骨重量の低下を強力に抑制する7環性海産アルカロイド、ノルゾアンタミンならびに顕著な抗炎症作用と鎮痛作用を有するゾアンタミンの全合成研究を展開し、三つの合成上の重要課題:(1)C環上に存在する3個の四級不斉炭素の立体選択的構築、(2)トランス-アンチ-トランスに縮環したパーヒドロフェナンスレン骨格(ABC環)の立体選択的合成、(3)二組のアミノアセタール構造ならびに架橋したδ-ラクトン環を含むDEFG環部の立体選択的構築、を解決することにより、これらのアルカロイドの最初の化学合成を達成した。ノルゾアンタミンの全合成は5-メチルシクロヘキセノンから出発して41工程、全収率3.5%、各工程の平均収率は92%であり、本合成によりゾアンタミン系アルカロイドの高効率的な化学合成ルートを確立できた。またノルゾアンタミンのC19位にメチル基を導入するルートを開発し、ゾアンタミンの最初の化学合成を達成した。 (2)ソラノエクレピンAの全合成研究 ジャガイモシスト線虫(PCN)の孵化促進物質であるソラノエクレピンAの不斉全合成を目指し新たに4-メトキシ-3-ブテンニトリルの共役付加反応を基軸とする効率的なシクロペンテンアヌレーション反応を開発するとともに、2環性エノンの効率的な合成法を確立した。またエポキシアルコールのピナコール転位ならびにエポキシニトリルの分子内アルキル化反応を基軸とする合成ルートを立案し、ソラノエクレピンAの合成上の最重要課題であるトリシクロ[5.2.1.0^<1,6>]デカン骨格の効率的かつ立体選択的な構築法に成功した。 (3)ミサキノライドの不斉全合成研究 強力な抗癌活性を示す二量体マクロライド、ミサキノライドAの全合成研究を行い、実質的な標的化合物である単量体プレミサキノライドAの立体選択的合成に成功した。
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